姉の病気をきっかけに、情報処理の道から看護の道へ。無我夢中だった新人時代が今の私の原点

看護師 N.T

 高校2年生までは情報処理の学校に通い、そのまま就職するつもりでした。しかし、看護師である伯母からの勧めと、ちょうど姉が病気になったことが重なりました。姉のそばにいても何もできない無力さを感じ、「看護師という資格があれば、家族や大切な人を支えられるかもしれない」と強く思うように。そこから、私の進路は大きく変わりました。学生時代は、もともと「手に職をつけたい」という思いが強かったので、勉強に打ち込みました。ただ、3年生の実習では「本当に看護師になれるんだろうか」と、緊張と不安でいっぱいだったことを覚えています。看護師1年目は、正直なところ、ほとんど記憶がないくらい必死でした。日々の業務と勉強の両立に苦労し、新しい知識を学ぶ余裕もなく、同期と比べられているような焦りも感じていました。目の前のことに追いつくので精一杯で、毎日が無我夢中。今振り返ると、あの時の経験が、私の看護師としての土台になっているのだと感じています。

「人はマニュアル通りじゃない」から面白い。
温かい人間関係の中で、一人ひとりに向き合う看護を

 私が看護をする上で何よりも大切にしているのは、「人間観察」です。患者さんはコンピューターではなく、一人ひとり全く違う背景や価値観を持っています。言葉だけでなく、表情や仕草からも気持ちを汲み取り、その方が「どう関わってほしいのか」をじっくり観察し、少しずつ距離を縮めながら、その方に合った看護を見つけていく。このプロセスに、看護の面白さと奥深さを感じています。この病院で9年間勤めて来られた一番の理由は、温かい「人」に恵まれたからです。新人時代、なかなかできずに落ち込んでいた私を、先輩方は見捨てずに根気強く指導してくださいました。「なぜそうなったのか」を一緒に考え、次に繋がるアドバイスをくれたおかげで、失敗を恐れずに挑戦できるようになりました。この恵まれた人間関係がなければ、きっと今の私はいなかったと思います。

人の人生に深く関わることで、自分自身の世界も広がる。
学び続け、後輩と共に成長していきたい

 看護師になる前の私は、「他人は他人、自分は自分」と割り切って考えるタイプでした。しかし、この仕事を通して、患者さん一人ひとりが持つ人生の物語に触れる中で、「人を人として見る」ことの大切さを学び、自分の世界が大きく広がったように感じます。特に印象的だったのは、4~5年目に後輩の指導を任された時のことです。人に教えることの難しさを痛感すると同時に、自分の知識不足を補おうと必死に勉強しました。後輩と一緒に悩み、調べる中で、自分自身が大きく成長できたと実感しました。9年目になった今でも、医療の世界は日進月歩で、学ぶべきことは尽きません。これからも学び続ける姿勢を忘れずに、後輩の成長をサポートしながら、自分も一緒に成長していきたいと思っています。